侘しい雨音

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 日本の教育費はGDP比2.9%でOECD38ヵ国中、ワースト2位。教育支出に於ける私費負担率もOECD38ヵ国中、ワースト2位の56.6%でOECD平均値の約3倍もあるのだ。而も実質賃金が下落し物価が高騰しているのに自民党は消費税を増税して貨幣増刷して防衛費をGDP比2%、つまり倍にする気だ。防衛費を減らして予算を組み替えれば、年金増額、医療費負担ゼロ、消費税減税、学校の給食費只、大学の授業料只等が可能になるのに自民党は絶対そうはしない。 「国民の為でなく利権の為の政治をするし、アメリカの犬だからだ」 「台湾有事に備え、アメリカ様の兵器をアメリカ様の言い値で大量に買わされ、アメリカ様を儲けさせておいて軍拡し、台湾有事が起きればアメリカ様のお役に立とうと集団的自衛権行使!」 「そんなことになったら中国と全面戦争に発展!」 「日本列島が最前線になる」 「それがアメリカの狙い」 「そのアメリカはと言えば、日本を見殺しにし、中国が戦力消耗するまで遠くから傍観」 「消耗したところで中国を叩く!」 「それがオフショアバランシング戦略!」 「そうとも知らず、日本はアメリカに踊らされながら中国を挑発し捲る」 「中国はロシアとは違うと強調して台湾侵攻は有り得ないことを仄めかしているし、仮令、台湾有事があっても日本は中国に敵いっこないからアメリカの兵器を買うのは金をどぶに捨てるようなものだな」 「そんな愚かなことはとっとと止めろっつうんだよ」 「せめて戦闘機一機買うのを止めて社会保障費に充てれば、それだけで貧困に喘ぐ母子家庭世帯がどれだけ助かることか」 「教育費に充てれば俺だって大学に行けたのにな」 「俺もだ。なのに俺たち百姓になっちゃった」  二人は高校卒業後、農家に就職した。跡継ぎが無く高齢化が進む農業に一役買うのも良かろうという意気込みで。そんな男気のある二人は、田んぼの畦道に腰を下ろして田植えが終わったばかりの田んぼを眺めながら会話していると、雨がぽつりぽつりと降って来た。 「そう言えば、アメンボ一匹いないよな」 「オーガニックじゃないから」 「害虫もいなければ益虫もいなくて水の波紋しか見れないや」 「なんだか雨音が寂しげだよな。田園風景が殺風景に見えて来た」 「子供も遊んでないしな」 「まだ俺らあの子供の頃はトンボとかカエルとかザリガニなんか捕まえてたけど」 「トンボもカエルもザリガニもいないし、子供もいない。爺さん婆さんは歩いてるけど」 「少子高齢化か・・・」 「人口がどんどん減ってイーロン・マスクが予言したように日本は消滅するかもな」 「私費負担が多すぎて子供なんか作ってられないんだよ」 「下手に子供作ると、子供が金食い虫にしか見えなくなるんじゃないか」 「徒でさえ子育てって無理ゲーと言える程きついらしい上にそれだから子供が減ってるのに子供を虐待する事例が増えてるんだよ」 「殴る蹴るは当たり前で水風呂、熱湯風呂に沈めるわ、カッターとかで傷つけるわ、アイロンとかで火傷させるわ、首を絞めるわ、ベランダに逆さづりするわ、異物を飲み込ませるわ、冬に外に締め出すわ、ひでえもんだ」 「でさあ、児童相談所の対応がなってなくて一週間に一人子供が虐待死させられてるんだぜ」 「徒でさえ少子高齢化で人口が減り続けてるのに・・・」 「このままだと少子高齢化が確実に進むし、貧困層が増えて婚姻率も低下してるから、この先、減る率が物凄いことになって10年毎に一千万単位で減ってくぜ」 「本当に日本は自民党政権のままだと滅亡に向かうな」 「このまま中国を敵視して、これ以上中国との関係がキナ臭くなったら化学肥料も輸出してもらえなくなるし、このまま円安が進むと、東南アジア技能実習生が来なくなるから唯一自給率100%の米も十分作れなくなって食糧危機になるかもしれないし・・・」 「円安なのに中国の観光客も来なくなるよ。外国人観光客全体に占める割合が一番多いから日本にとって大事なお客なのに中国と仲良くしないから」 「中国は日本にとって最大の貿易相手国でもあるから中国と仲良くすれば儲かるのにな」 「それをだ、こともあろうに仮想敵国と名指しして挑発してんだから呆れるぜ」 「日本防衛を名目にタカ派的発言をして自ら戦争の危機を煽ってるようなものだ」 「下手したら藪蛇で本当に戦争になるよな」 「それなのに自民党を支持する国民って何なんだよ」 「少なくとも自民党政権のままだと、何たって資本主義成功の秘訣はノブレスオブリージュの精神にあるのにモラルハザードを事としているから俺たちの生活が益々貧しくなるのは必至なのにな」 「それだけでなくて原発再稼動するから国民が常に危険に晒されるよ」 「あと自衛隊員も不足してて高齢化が進んでるから俺たち徴兵されるぜ」 「そんで戦場に駆り出されるのかよ」 「やだよ、戦争なんか真っ平御免だ」 「俺もだよ・・・」  二人はすっかり心中が荒涼とし、殺伐として田園風景が一層、殺風景に目に映り、雨音が寂しげを通り越して侘びしげに耳に響いて来るのだった。
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