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「ええ。たしかにおりましたよ。でも、昨夜遅くに老衰で亡くなりまして」
「えっ⋯⋯」
「家族は皆、あの子を愛していました。鳥カゴがあるとあの子を思い出してしまうから」
「そうでしたか」
「あの子はカゴに鍵をかけないと、時々どこかへ飛んでいくんです。でもしばらくすると、自分でカゴに戻っているんですよ」
「自由に飛んでいく⋯⋯」
「最近は、特によく出掛けていましたね。きっと、自分の命が長くないのを知っていて、心のままに行きたい場所へ行っていたんでしょう」
「あの⋯⋯その文鳥は、いつからここに」
「それが、10年くらい前に、そこの庭の木にちょこんと止まっていたんですよ」
10年前は、祖母の家から私がリーくんを逃がした時期だ。間違いない。
リーくんはここで暮らしながら、最期までずっと私を見守ってくれていたんだ。
常に自由を求めていたリーくんは、私の心の解放と自由を与えてくれた。
でも、リーくんは幸せだったのだろうか。
これまでずっと、リーくんを逃がしたことを後悔していた。罪の意識が強かった。
たとえ自由になったとしても、飼い慣らされた文鳥が野生で生きていくのは厳しい。
でもリーくんは幸せだったと信じたい。
この世界を自由に羽ばたきながら。
もう、リグレットは手放してもいい?
だから最期に奇跡をくれたんだよね。
手に握っていた小さな朱色の手紙には、小さな文字でこう書いてあった。
『君らしくていいんだよ。
そのままの君でいいんだよ。
きっとその先に幸せが待っているから
リベルテ』
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