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私は、鳴き方を忘れた文鳥だ。
深夜ドラマの声だけが響く部屋。
刺激にも慰めにもならない画面の明るさが、暗闇に光を放つ。
横たわるお気に入りの朱色のソファーが、頬の当たる部分だけジワジワと濃い赤色に変わっていくのが分かる。
本当は泣きたかったんだな――私。
現実は1ミリも変わらないのに。
無理をして笑みを浮かべる癖がついたのは、いつからだったか。
本心を隠して生きることには慣れている。
まるで、鳴き方を忘れた文鳥みたいに。
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