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白い結婚を言い渡されました
「ヴィクトリア、すまない。初夜にこんなことを言うのもどうかと思ったが、きみを抱くことは控えさせてもらう」
目の前に立つ旦那様はわたしから顔を逸らし、低い声で静かにそう告げた。
広いベッドの端に腰かけながらその宣告を受けたわたしは、呆然とするよりもむしろ恥ずかしくていたたまれなくなってしまった。
透け透けのナイトドレスにガウンを羽織っただけという何とも煽情的で準備万端な出で立ちで、今宵この人に純潔を捧げるのだと覚悟を決めて旦那様が部屋に入ってくるのをドキドキしながら待っていたというのに。
初夜にいきなり拒絶されるとは思っていなかった。
そういう話があると噂には聞いていたけれど、まさか自分が当事者になるだなんて…何て滑稽で惨めなんだろうか。
やる気満々の新妻と、最初からやる気などなかった夫。
こいつイタイ…と思われて、目を逸らされるのも当然だ。
わたしは声を震わせながら、どうにか「承知いたしました」と返事をしたのだった。
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