969人が本棚に入れています
本棚に追加
ダンジョンの受付で登録カードの裏、パーティー名が表示されている面を見せると「三名様ですね、お気をつけていってらっしゃいませ」と笑顔で見送られる。
ダンジョンの入場の際にはその都度入場料を支払わないといけないのだが、常連パーティーの場合はパーティー資金を貯めている口座があり、そこから自動振替されるシステムになっている。
「ここから右に行くとレジャー施設で、私たちが行くのはこっち」
ハットリに説明しながら左側を指さす。
小さな部屋の奥、壁のニッチに置かれている水晶玉にカードをかざしながら「地下17階へ」と告げると床全体が青白く光り、次の瞬間、わたしたち三人は地下17階の入り口に到着していた。
「うわ、すっげ」
ハットリがキョロキョロしながら驚いている。
ダンジョン初体験者は必ずこういう反応をする。
あの小部屋は転送装置になっていて、カードに記録されている階層ならどこへでもパーティーごと転送してくれるのだ。
最前線パーティーへの加入はこういった利点があるため加入希望者は後を絶たないのだけれど、ロイパーティーは来るもの拒まずというスタイルではなく、即戦力・少数精鋭がモットーだ。
ただ、ロイさんがいなくなってわたしが実質的なリーダーを務めるようになると、ロイさんを信奉していた数名がほかのパーティーに移籍し、冒険者を引退した人や進退を明らかにせず籍を残したままフェイドアウトしている人もいる。
しかもロイさんは一人で十人分ぐいらいの戦力だったのだから、我がパーティーの実際の戦力はガタ落ちなのだ。
そんなパーティーの内情から考えると、選り好みなどせずやる気があって見込みのありそうな人材をゼロから育成していくことも考えなくてはいけないが、そこまで手が回らない。
「さてと、お手並み拝見よ。頑張ってね、ハットリさん」
わたしたちは地下17階の奥へと足を踏み出した。
最初のコメントを投稿しよう!