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「あの光ってるお姉さまから鍵をもらってきて」
「おう」
やはりハットリは素直なのだろう。
詳しい説明を求めることなく、ボス部屋へと入っていく。
「あのう、鍵もらえます?」
ハットリの声が聞こえる。
「ありがとうございます」
鍵を手に戻って来たハットリは、扉に隠れているわたしたちを見て「何してんすか」と首を傾げた。
やった!
ボスクリア!討伐完了!
扉をお尻でドンと突いて閉めながらエルさんと抱き合って喜んだ。
トールさんも無言で手をパチパチ叩いている。
「は?何?」
何もわかっていない様子で戸惑うハットリにもエルさんが抱き着く。
「すごいね、ハットリくん。頼りにしてるよ」
「だから、何?」
クスクス笑って再び扉を開けながら説明する。
「さっきのBAN姉さんなんだけどね、実はこの階層のボスなの」
小部屋にはBAN姉さんの姿はなく、先ほどまでBAN姉さんが座っていたはずの木製の椅子の座面に宝箱があった。
この階層はBAN姉さんから鍵を受け取ることでクリアとなり、その戦利品がこの宝箱なのだが、このボスの厄介なところは、人の悪意を敏感に感じ取りそれを跳ね返すだけでなく、悪意を向けられたと感じるとその対象者をダンジョンからも冒険者協会からもBANするというペナルティーを与えるのだ。
BANとは強制的かつ一方的な登録抹消のことで、このペナルティーをくらうと当然ながらこれまでの登録カードが使えなくなり、冒険者登録手続きやパーティー加入手続きがやり直しとなる上、一旦登録を抹消すると三日間は再登録できないという規定まであるため非常に厄介なのだ。
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