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「その鍵で宝箱を開けてみて」
ハットリはその指示にも素直に従って箱を開けた。
中に入っていたのは、たくさんの金貨とパーティー全員を瞬時に回復できるレアな噴霧タイプのポーションのほかに、両手に乗せてちょうどいいぐらいの大きさの、ほんのり赤みを帯びたタマゴだった。
「なんだこのタマゴ」
ハットリが目の高さまで持ち上げてよく見ようとしたところでタマゴにひびが入った。
中から出てきたのは赤いトカゲ――サラマンダーだろうか――で、ハットリを認めると嬉しそうにパカっと口を開いて小さな炎を吐いた。
「うわあぁぁぁっ!」
熱烈な挨拶に驚いたハットリに放り投げられたサラマンダーは、クルリと回って見事な着地をきめると、素早い動きで椅子をよじ登り宝箱の中の金貨を吸い込み始める。
チャリン、チャリン、チャリーン!と小気味よい音を響かせながら金貨を飲み込んでいくサラマンダーを、わたしとエルさんは手を叩きながらにこやかに眺めていたのだけれど、事情を呑み込めていないハットリは慌て始めた。
「おいぃぃっ!待ていっ!俺の戦利品だっ!」
その叫び声に反応してサラマンダーがぴたりと動きを止め、ハットリを見た。
「この子、従順でお利口だねえ。ハットリくんの根の性格がそうなんだろうね」
エルさんが笑いながらわたしをチラリと見て、その意味が分かったわたしは少々むくれてしまったのだが、あまりここでモタモタしてはいられないためスルーすることにした。
BAN姉さんがリポップするまでにここを立ち去らなければ、うっかり目が合ったらBANされるかもしれない。
「ハットリ!それあなた専用のペットだから大丈夫よ。後からちゃんと取り出せるからその子に全部吸ってもらって早くここから立ち去るわよっ」
そしてハットリは戸惑いつつもサラマンダーに続けるようにと指示を出し、無事ダンジョン1階に戻って来たところでようやく全員の緊張が解けたのだった。
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