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ダンジョン内と冒険者協会の敷地内でのみ召喚できるペットは、戦闘の補助と荷物の運搬を担っている。
ペットの体内は広大な亜空間になっているようで、ドロップ品をどんどん回収していってくれるし、ペットを召喚できる場所であれば取り出しも自由。
だからハットリのように手裏剣を投げまくって戦うタイプには何ともありがたい存在となるはずだ。
「実は昨日のハットリの手裏剣ね、わたしのペットに回収してもらっていたの」
ダンジョン1階に設けられている戦利品を分配するための「山分けスペース」で、わたしは自分のペットを召喚した。
「出ておいで」
実はダンジョンの中に入ると自動召喚になるためペットとはいつも一緒にいるのだが、普段は他のメンバーの目障りにならないように姿を消してもらっているのだ。
そんな便利機能まである。
突如として姿を現したわたしよりも二回りほど大きな体躯の緑毛のクマを見て、ハットリが「うおっ」と驚きの声をあげる。
「手裏剣を出してちょうだい」
そう告げた途端、昨日ハットリが投げ捨てた手裏剣がきれいに重ねられた状態で目の前のテーブルに出現した。
「ふおぉぉぉっ!」
奇妙な感嘆の声をあげるハットリは、確かに素直な性格なのだろうと思う。
「やったぜ!…てことは、ペットさえいれば手裏剣をあらかじめ大量に持たせておくことも可能?」
「もちろんよ」
「すげえ、便利過ぎじゃね?このサラマンダー、俺がもらってもいいの?」
ハットリは上気した顔でサラマンダーを見た。
そのサラマンダーはと言えば、エルさんとじゃれ合って楽しそうに遊んでいるところだった。
「いいも何も、ペットはBAN姉さんクリア者専属で誰かに譲渡することは不可能なの。ハットリは人間では15人目のクリア者だけど、実際にこのダンジョンでペットを動かしている冒険者は今のところ二人しかいなくて、そのうちの一人がわたし。もう一人がユリウスさんっていう人でハットリが三人目ってことになるわね」
「ふぉぉっ、なんじゃそりゃ、超激レアってことか。やったぜ!」
ハットリが喜んでいる。
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