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攻略中のダンジョンは、マーシェス侯爵領内にあるあの大樹が入り口になっている。
大樹を中心に広がる街は、そのダンジョンの攻略を目的に集まる冒険者によって発展していったようなものだ。
冒険者たちが寝泊まりする宿屋、飲食店、武器防具屋、鍛冶屋、道具屋、治療院…それらを侯爵家が設立した冒険者協会が束ねて統制を保っている。
世界各地に存在するダンジョンの中には、ならず者たちばかりが集まる無法地帯のようになっているところもあると聞いているけれど、マーシェス領のダンジョンは内部の手入れも行き届いているし、街もとてもきれいに整備されている優良ダンジョンだ。
入ってすぐ、1階のフロアの奥に出没するスライムは何とも可愛らしくて、魔物というよりはもはやペット感覚で「スライムと遊ぼう!」というふれあいコーナーまであったりする。
それはもはや魔物の巣窟ではなくただのレジャー施設のようで、世界のダンジョンを紹介している『ダンジョンガイドブック』には、初心者にオススメのダンジョンとしてこのように紹介されている。
『マーシェスダンジョン:魔物を見てみたい、触ってみたい、剣をふるって魔物を倒し冒険者気分を味わってみたいというエンジョイ勢にはここがオススメ ☆5』
わたしがこのダンジョンに足を踏み入れるきっかけとなったのも、このガイドブックを読んで興味がわいたからだった。
実家の領地に近いこともあり、興味本位で足を踏み入れたあの日のわたしは、まさか自分がこんなにもどっぷりダンジョン攻略という沼にはまってしまうとは想像もしていなかった。
わたしの家族はそのことを知っていて、だからこそこんな娘に嫁の貰い手はないだろうと諦めていたところに降ってわいたマーシェス侯爵からの縁談に飛びつき、早く結婚をとせかされるがままに了承したのだ。
わたしがそれに渋々了承したのも、お相手がマーシェス侯爵の御曹司だったからにほかならない。
代々当主が冒険者協会長を務めているのだから、何か裏情報が手に入るかもしれない!
領地に住むことができれば近くて便利!
そう思ったからだった。
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