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遠くで吹奏楽部がチューニングを始めた。あちこちから部活の気配が感じられる。もうその資格はないのに、この時間に下校する事への後ろめたさが込み上げてくる。
駐輪場で雨を避けながら、傘をさした生徒が校門をくぐっていくのをみていると、何故だかそれを咎められているようにも感じ、遅い到着に腹を立てながら現れた母の車へ乗り込んだ。
「ちょっとコンビニ寄っていい?お母さん、車の税金払わなきゃ」
先に寄ってくればよかったじゃん。出かかった言葉を抑えたのは空腹を感じたから。
家の近くのコンビニ。時間的にも知り合いに遭遇する危険は高く、めぼしいものを母のカゴへ入れ、さっさと車へ戻った。
戻ってきた母親が膨らんだ買い物袋を助手席に下ろす。
「結構買ったねぇ」
「腹減った」
「運動しなくても食べる量はおんなじか」
「は?」反射的に言葉が飛び出す。
「だったら食わねぇよ」
「……好きにしなさい」
車の中は重い沈黙に包まれて、ワイパーの音だけマイペースに鳴り続けた。
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