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「あれ?三田、アーマー変えてなくね?」
ヘッドフォンの向こうから、コージの声が不自然な鮮明さで聞こえてくる。
「やべ。忘れてた」
「おいおいー」
「やる事多すぎんだって、このゲーム」
「もう取りに戻れねぇからな」
「分かってるよ。てか俺、弾当たらねぇから問題ねぇ」
「おっ、言ったな。小川、そっちの敵どう?」
モニターの中の景色が、自分のコントローラーの操作に合わせて流れていく。
前を走るコージのキャラクターは素早い。性能差はそれほどないはずなのに、少しずつ距離が開いていく。
見失わないようにと思う半面、別にどうでもいいという思いも湧いてくる。
そうしてみると途端にゲームと、自分と、コントローラーを握る自分の両手との間に壁が建ち、それぞれが別の意志に持って動きだす。
「三田!前に敵!」
コージの声でハッとなり、慌てて気持ちをゲームへ向けたところで銃声。
画面中央には自分のキャラクターが死亡した事を伝える文字が現れた。
「あー、わりぃ」
「弾当たらねぇんじゃなかったのかよ」
耳元で響くコージと小川の笑い声。それに答えるように自分も口元のマイクへ笑う。
ほどなくして味方の二人もやられてしまい、ゲームは敗北に終わった。
「ドンマイ、ドンマイ。次行こうぜ」
「いやぁ、申し訳ねぇ」
溌剌と言ったコージへ、小川が返す。ヒットを打たれた後の小川の顔が、脳裏に過る。
ーーいやぁ、申し訳ねぇ。今のは俺のリードが悪かった。
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