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 あらゆるものの頭の上につく『中学校生活最後の』という言葉にうんざりするのも飽きてきた頃、梅雨入りを迎えた。  一番左の列の前から三番目の席から見る窓の向こうには、灰色の空と静かに落ちていく雨。視線を下へ向けると校舎から校門へ向け移動していく傘の群が見える。 「三田(みた)!」  名前を呼ばれて声の方へ顔を向けると、帰り支度を終えた小川が教室の入り口を顎でしゃくった。 「迎え呼んだ」 「はぁ?先言っとけよ」 「乗ってく?」 「あー、いいや。じゃあ帰るな」 「おう」  手を上げて教室を出ていく小川を見送ると、また窓の外へ目をやって息を吐いた。  ガラス窓にやる気のない自分の顔が映る。半端に伸びた坊主頭。窮屈になった学生服。  鞄を持って昇降口へ向かった。廊下は薄暗い。放課後の騒がしさは変わらないはずなのに、雨の日は不思議な事に静けさすら感じる。校舎全体の色が淡くなっているような気がする。  体育館前の廊下に近付いた時、慌ただしい足音が聞こえてきてハッとなる。引き返し、格技場の方へ下り、剣道部の掛け声を聞きながら別の階段を上った。  体育館前の廊下は野球部が室内練習に使っているかもしれない。うっかり通り掛かりでもしてたら「おぉす」の嵐を受ける事になる。
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