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しばらく2人で押し黙り、下を向く。
鉄さんのお母さんのこと、お父さんのこと、小学生の鉄さんのこと、それから今までの鉄さんのこと。
恐らく同じ思いを巡らせながら、2人で静かに考えていると、それはまるで、黙とうを捧げているようで、会ったこともない鉄さんのお母さんに触れているような、そんな気持ちになった。
「あの人、すげーな。」
「うん。すごい人に巡り合えた。」
「俺もいつか、お礼言いたい。」
「うん。今度2人で待伏せしよう。」
「連絡先知ってるんじゃないの?」
「知ってるけど、それを使うのはなんだか乙じゃない。」
二パっと笑うと、啓が微笑んで私を抱きしめた。
「その顔、俺以外の男の前でするの禁止。」
「なんで?」
「鉄さんも言ってただろ。めちゃくそ可愛いんだよ。しっかりものの皆川さんの無防備な破顔。」
「そうなんだ。いいこと聞いた。」
「こら。企むな。」
啓が腕に力を込めて、私の髪の匂いを嗅ぐ。
「あ~これこれ。いい匂い。」
目を閉じて啓を抱き返すと「このまま家行っていい?」と囁かれ、腕の中で頷く。
「いっぱいイチャイチャしような。」
「うん。」
「やべ、もう反応しそう。」
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