12.愚痴の後

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「いや、そうだよな。郁は悪くない。」  絞り出すように言う啓が可哀そうで仕方ないけれど、我慢しないと誓ったばかりなので、私の気持ちは揺るがない。 「ごめんね。大丈夫と思えるまで、キスはなしでお願いします。」 「うん。・・・キスだけ?それとも、イチャイチャ全般?」 「たぶんキスだけ。たぶん。」 「たぶんっ!?全般になる可能性もある??」 「ある・・・かも。ちょっと今日、試してみよう。」 「おう!絶対、気持ち悪くならないようにするから!頑張る!」 「うん。なんかごめん。ありがとう。」  なんとも気まずい気持ちになりつつも、しばらく見つめ合う。こんなに真っすぐに見つめ合うのは久しぶりな気がして、 「啓と目が合うの嬉しい。」 と呟くと 「俺も。」 と微笑まれた。
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