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いつものように仕事を進めて行き
昼になる。そして、わざとらしく
「あっ!いけね〜!弁当忘れて来た!」
「えっ!権左!仕出弁当だろ、いつも」
「いや、今日は特別で
妹が作ってくれたんですよ」
「え〜〜!お前に妹なんていたのか?」
「はい、チョット歳の離れた妹が
これからこっちで働く事になって
歳は20歳ですけど、お兄ちゃん、お兄ちゃん
と小さい頃から俺の後をおいかけてきて
全くいい加減兄離れして欲しいですよ。
東京に来て一人暮らしはチョットと言う事で
しばらくは俺のアパートから通う事に
なったんですけど
それで妹が弁当作ってくれたのに
忘れちゃいました。しょうがないので
チョット、パンでも買って来ます」
そう言って俺は大急ぎで車に戻り
車の窓のカーテンを閉め、急いで
つなぎを脱ぎ変身スーツのファスナーを
閉める。そして蓮香ちゃんに変身して
「セット」と一言
可愛いいワンピース姿になる。
自分で作った弁当を持って、いざ工場へ
工場の中に入り
「すみませ〜ん、田所の妹ですけど」
と大きな声で叫んだ。
すると、奥の休憩室から2人出てきた。
近藤さんと鈴木さんが出てきて
俺の方に近づいてきた。
「何でしょう?」近藤さんが聞いてきた。
「すみません、お昼どきに
僕、田所の妹で蓮香と言います。
朝、兄にお弁当作ったのに忘れて
いったので届けに来たんです。
お兄ちゃん・・・兄はいますか?」
「そ、そうなんだ、今権左は
パンを買いに行ってるから
すぐに戻ると思うよ。
中に入って待っていればいいよ」
近藤さんが挙動不審な動きを
しながら俺に言っていた。
「わかりました、それじゃあ
お言葉に甘えてチョットだけ・・・」
そう言って俺は中に入った。
工場には8人ほどいるのだが
全員が俺を見ている。
鈴木さんが、
「蓮香ちゃんだっけ?」
「はい、田所蓮香と言います」
「蓮香ちゃん、今度東京で働くんだって?
さっき権左に聞いたよ。それにしても
可愛いな〜蓮香ちゃんは」
「本当に!権左の妹にしておくのは
勿体ない!」
「そんな、僕・・・恥ずかしいです」
「蓮香ちゃん、自分のこと「僕」って
言うんだね」
「はい、兄が昔「僕」って言っていたのが
移っちゃって、いつの間にか「僕」に
なっちゃたんです・・・
お兄ちゃん遅いですね」
「そうだな、権左の奴なにしてるんだろうか
こんな可愛い妹が弁当を届けてくれたのに」
「僕、これから出かけるところがあるので
これで帰ります。
兄にお弁当を渡していただけますか?」
「はい、わかりました。
権左に渡しておくから」
俺は、そう言って工場を出て行った。
急いで車に戻り、つなぎに足を通して
「セットオフ」と一言いう。
蓮香ちゃんはまっぱ状態!
素早くファスナーを半分以上下す。
元の俺に戻った、Tシャツを着て
つなぎを着て、工場に戻る。
工場に入ると先輩達が、一斉に俺の所に来て
「権左!何で今まで黙ってた!
あんな可愛い妹がいるなんて一言も
言わなかったじゃないか!」
俺は、訳がわからないふりをして
「なんのことですか?」
と、とぼけた。
「今、お前の妹の蓮香ちゃんが
弁当届けに来てたんだぞ!
何してたんだよ!お前は!」
「はい、パンも売り切れていて
しょうがないから、ラーメン食べてきました」
「バカか!お前は!あんな可愛い妹が
弁当届けに来てくれたのに」
「いや、そんな事いわれても・・・」
「とにかく!この弁当残らず食え!!
せっかく蓮香ちゃんが届けてくれたんだから
食え、食え、く〜えっ!」
「わかりましたよ」
そう言いながら俺は自分で作った弁当を
食べた。とんでもなく不味かった。
しかし、蓮香ちゃんのお披露目大成功!
自己満足に浸る俺だった。
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