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わたしはその場にしゃがみ込んだまま、何も言えなくて……。
「透子は俺の大事な人なんだ。愛してるんだよ、透子のこと。いいか、今回だけは見逃してやる。……だけど次、透子に何かしたり、傷つけるようなことをしたら。今度こそ俺は、お前のことを警察に突き出す。いいな?」
強い口調で彼女に向かってそう言った藍は、怒りをこらえているようにも見えた。
「っ……分かったわよ!」
彼女は泣きそうになりながら、その場から走り去って行った。
「透子、大丈夫か?」
「あ、おい……。怖かった……」
正直に言うと、本当に怖かった。
震えるくらい怖くて、本当に殺される……。そう思っただけで、どうしようもなく震えた。
「もう大丈夫だ。俺が付いてるから」
藍はわたしを優しく抱きしめてくれた。そして頭を撫でながら、「大丈夫だ」と何回も言ってくれた。
「藍、ありがとう……。助けてくれて、ありがとう」
藍には感謝しかない……。
「気にするな。言っただろ?お前のことは、俺が守ってやるって」
「うん……」
藍と結婚したことは、間違いではなかった。今ならやっぱり、そう思える。
藍はわたしの、ヒーローだ。
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