【13.過保護な夫】

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【13.過保護な夫】

「透子、お前……ケガしてるじゃないか」  藍は言われて気付いた。どうやらわたしは、ケガをしてしまっていたみたいだ。 「すぐに手当しないと」 「大丈夫だよ、こんなの。かすり傷だし……」  と言ったけど、藍は「ダメだ。家に入って消毒しないと」と言ってわたしをおんぶしようと、わたしの前にしゃがんだ。 「へ?あ、藍……?」  何なの?この状況は……? 「乗れよ。おんぶしてやる」 「い、いいから!そんな……! ひ、一人で歩けるし……!」    おんぶなんて、恥ずかしすぎる……! 「ダメだ。妊婦なんだから、透子は」 「で、でも……」 「でもじゃない。大人しく旦那の言うこと、聞いておけ」  そう言われたわたしは、「はい……」と返事をした。 「大丈夫か?痛くないか?」  部屋の中に入ると、藍は消毒しながらそう聞いていた。  「うん、大丈夫だよ」 「お腹痛いとか、ないか?」  藍はお腹に手を当てて、心配そうにそう聞いてきた。 「大丈夫だと思うけど……」  と答えると「心配だ。念の為、病院に行こう」と藍は言い出した。 「え!? そ、そんな……。大丈夫だって」  と言ってみたものの、藍は聞き入れてはくれず……。「ダメだ。子供に何かあったら大変だ。すぐに病院に行こうと」と言い出してしまった。 「藍、そんな……大丈夫だってば」 「ダメだ。すぐ支度してくるから、ちょっと待ってろよ? 車出してやるから」 「え?ちょっと、藍……!?」  藍はそう言い残し、部屋の方へと行ってしまった。 「もう、藍ったら……」
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