【13.過保護な夫】

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 わたしがそう言うと、藍は「……そうかもしれない」とだけ答えた。 「そっか」  それ以外何も言葉が出なかった。 「俺のせいだ」 「え?」   「俺のせいだ。俺がちゃんと相手に言わなかったせいだ。……本当にすまない」  藍はなぜか、わたしに謝ってきた。 「謝らないでよ」 「透子……?」 「謝らないで。藍のせいじゃないから」  わたしはそう言うと、微笑みを浮かべて藍の肩を叩いた。   「透子……。お前はやっぱりいい女だな」  と、藍は笑った。 「だってわたし、藍の妻だし。 強気な女が、好みなんでしょ?」 「ああ、そうだ。透子みたいな女が好みだよ。透子のこと、愛してるしな」  藍にそんなことを言われたら、なぜか嬉しくなってしまう。 「ありがとう、藍」 「ああ。 あ、もう着くからな?」 「うん」  病院に着いて車を止めた藍は、わたしの手を握り病院の中へと入っていった。   「透子、お腹は大丈夫か?」  待合室で待っている間、藍は心配そうにそう聞いてきた。 「うん」  藍は心配し過ぎだけど、父親としての自覚がちゃんと出てきている。
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