【1.高城藍】

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「俺は透子、君みたいな女性がタイプなんだ」  ハイボールの入ったグラスを片手にそう語る彼は、わたしをジッと見つめていた。 「……あなたが言うと、ただの女好きにしか聞こえないんだけど」  わたしはそう言葉を返してジントニックを一気に飲み干すと、今度は彼と同じものを頼んだ。 「彼と同じものをください」 「かしこまりました」 「で、藤野透子。俺のパートナーになる気は?」  わたしのことを横目で見ながら、彼はそう問いかけてきた。 「だから言ってるでしょ?あなたのパートナーになる気はないって」  そう言った直後に、わたしの目の前にハイボールが置かれる。 「へぇ?俺は結構、イイ男だと思うけど?」 「言っておくけど、わたしにとってあなたはただのゲス野郎よ?あなた達のことを今でも恨んでる。夕月園を奪ったこと。それなのに公私ともにパートナーですって?……ふざけるのもいい加減にして」  わたしはそう言い放つと、グラスに入ったハイボールに口を付けた。  もうこうなったら、とことん飲んで忘れてやるわ。    何かも忘れて、リセットしないとダメかもしれない。こんなの理不尽だわ。
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