【16.家族になるために】

7/10
前へ
/156ページ
次へ
「透子。元気な赤ちゃん、産んでくれ」 「うん。……任せて」  わたしたちの間に出来た小さな奇跡は、こうして今生まれてくる瞬間を待ち望んでいる。  わたしたちはただ、その瞬間を赤ちゃんと一緒に待つだけ。焦らず、ゆっくりと……。 「そういや俺さ。子供の名前、もう候補決めたんだけど」 「え?もう、決めたの?」  知らなかった。もう決めていたなんて……。  いつの間に、決めてたの? 「ああ。2つあって、どっちにしようか迷ってる」 「知りたい。教えて?」 「まだ迷ってるから、決まったら教えてやるよ」 「約束だよ?」  藍が決めたその赤ちゃんの名前を、今からとても楽しみにしている。  わたしも藍に名前を決めてほしいから、藍の決めた名前に賛成したい。 「俺は、いい父親になるよ」 「……なれるよ、藍なら」  藍はこの子にとっては、世界でたった一人だけのパパなんだから。  この子が藍のことを世界一のパパと呼んでくれる日が、いつか来るかもしれないしね。  わたしはその日まで、待つことにしようかな?この子の母として、見守っていく必要があるから。 それからニ週間後ーーー。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2170人が本棚に入れています
本棚に追加