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「……はぁ?何がおかしいのよ!?」
わたしは何もおかしなことは言っていない。それにわたしが言っていることが間違っているとは、思っていない。
「言っただろ?俺は透子みたいな強気な女がタイプだって」
「だから、いい加減からかうのは……」
【からかうのはやめて】そう言おうとした最後のその言葉は、彼のその唇によって塞がれ、言うことが出来なかった。
いきなり口付けられたその唇は、ほんのりとさっきまで飲んでいたハイボールの味がして、それだけで酔いそうになってしまいそうだった。
「ちょ、ちょっと……。何するのよ!?」
わたしは勢いのあまり、近くにあった水を彼の顔面めがけてバシャッとかけてしまった。
「お客様、大丈夫ですか!?」
そこに慌ててスタッフが現れる。
「ああ、大丈夫です。ご迷惑おかけしてすみません。もう出ますので」
彼は濡れた前髪をかきあげると、お財布から一万円札を取り出し、それをカウンターに置くと「お釣りはいらない。迷惑かけたお詫びだ」と言った。
そしてわたしの腕を引っ張ると、そのままその足でお店を出た。
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