【3.高城藍の過保護】

6/11
前へ
/156ページ
次へ
 わたしの心配をしてくれなんて、わたしは彼に頼んだ覚えはない。  この人が勝手に心配してるだけ。 「透子、君のお腹の子の父親は俺だ。俺には君たちを守る責任があるんだ。 だから無茶をして透子に何かあったら、困るんだよ」 「なんで?なんでそこまでして……。バカじゃないの?」  困るのよ、そういうの……。 「バカでもいい。俺は君とお腹の子を幸せにしたい。……ただ、それだけだ」  なぜだか分からないけど、そう言われたら何も言い返せなくなった。 「……何なの。わたしにとってあなたは、特別な人でも何でもないのに」  変な人……。わたしにそこまでしてくれる理由が分からない。 「分かってる。……けど俺は、君のことを大事にしたいと思ってる。この先もずっと」     そう言って彼は、わたしの頬に手を乗せて撫でるように触れてきた。   「……悪いけどわたしは、あなたを好きにはなれない」  ずっと憎んでる。今でもずっと……。憎くて仕方ないのに。 「なら俺を好きにさせる」 「なにそれ……。バカじゃないの」 「バカだよ」  一言そう言われて、口付けを交わされた。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2170人が本棚に入れています
本棚に追加