【0.序章】

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「これからはこんな古臭い旅館なんかより、我々が経営するリゾートホテルの時代なんだよ。……少し考えれば分かるだろ?ね、女将」 「ちょっと待ってください。ここは古臭くなんてありません!……ここは、ここは歴史ある立派な旅館です!こんなにもたくさんの人に愛されてきたから、夕月園はここまで営業してこれたんです。 それはわたしたちじゃなくて、ここに来てくれるたくさんのお客様がいたおかげです!」  わたしは悔しくて、つい立ちあがってそう言葉を吐き出した。 「……やめなさい、透子」 「でも、女将……!」  だけど女将は、それを止めた。 「……ええから、座りなさい」    冷静さを失ったわたしと、冷静さを常に保つ女将では、歴然の差だった。 「……はい」  わたしは言われた通りにするしかなかった。 「女将、決断は早い方がいいですよ?」 「……こんなことして、あなた方になんのメリットがあるというのかしら?」 「メリット?そんなものはない。……ただ目障りなだけだよ、ここがね」  そう言って女将に向かって、あの男はニヤリと笑ったのだった。  その笑顔は、まさに【悪魔】だったーーー。
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