【0.序章】

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「女将……本当にいいんですか?このままで」  わたしは高城明人が帰った後、女将に向かってそう問いかけた。 「そうですよ、女将!いいんですか、このままで!?」 「……仕方ないわよ」  だけど女将は、それだけしか答えなかった。 「仕方ないって……。女将は悔しくないんですか!?」 「悔しいに決まっているでしょ!? 悔しいわよ、すごく……」 「じゃあなんで……!」  女将は高城明人から渡されたその紙を見つめたまま、話し始めた。 「仕方ないのよ……。夫が死んでから、わたしがここの責任者になったけれど、わたしは経営者としては半人前だったってことね……」  女将の旦那さんは、ガンで十年前に亡くなった。その後は女将が経営者として、夕月園やわたしたちを守ってきてくれた。  従業員たちが働きやすいような環境を作るために、女将自ら従業員の要望を聞き入れ、やりやすいように工夫しながらここまでやってきたのに。 「そんなことないです。……女将は、女将は立派な人です。 女将はずっと、わたしの憧れの人です。わたしの目標です。女将の背中を見て働いてきたからこそ、そう思います」
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