【0.序章】

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 わたしは必死で女将に語りかけた。なんとしても買収を阻止したくて……。 「ありがとう、透子。……でももう、限界みたいやね」 「え……?」    女将の限界とは、何なのだろうか……。 「夕月園を運営する資金はもうないわ……。資金を援助してくれていた銀行にも、この前融資を断られてしもうて……」 「え……!?」  融資を断られた……!?そんな……。   なんで、なんで……! 「夕月園には、もう融資は出来ないってね」 「そんな……。じゃあ夕月園は……?」  やっぱりもう、おしまいってことなの……?このまま、買収されるしかないってこと……?  そんなの、絶対にイヤ……!!   「……もう、無理みたいやね」 「そんな……!」  不審に思ったわたしは、夕月園に融資を断った銀行を調べた。  するとその銀行は、高城ホールディングスの取引先の銀行だということが判明した。  きっと高城明人が圧をかけたんだ……。夕月園には融資をするなって、もうそうとしか考えられない。  だから女将が融資を頼んでも断った。 高城明人が裏で手を引いてる。わたしたちをここから追い出すために。
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