【6.溺愛結婚の始まり】

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 藍は朝から、爽やかな笑顔を向けてくる。 「……おはよう」    と返事をしたわたしは、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、それを一口飲んだ。 「透子、体は平気か?」 「うん。まぁまぁかな」 「そうか。なら良かった」  読んでいた書類を閉じてファイルに入れた藍は、わたしのそばにやってきた。  そしてそのまま、優しく抱きしめてきた。 「藍、どうしたの?」  と問いかけると、藍は「今から会えなくなるから、透子を充電しとく」と言っていた。 「充電って……。わたし、スマホじゃないだけど」 「透子と赤ちゃんの愛を充電しておかないと、今から仕事頑張れないだろ?」  なんて言われると、なんて返せばいいのか分からなくて困ってしまう。 「……何それ。そんなの必要ある?」 「あるんだよ。少なくとも、俺にはな」  朝からそんなことを言われると、恥ずかしいしなんか複雑な気がする。 「行かなくていいの?仕事」 「そうだった……。寂しいけど、行かないと」 「早くしないと、遅刻するよ?」 「分かってる。 じゃあ行ってくる」  と、藍は仕事へと出かけていった。
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