【7.高城家のルール】

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 わたしのスマホには、藍からそんなメッセージが来ていた。 【もう……。仕事に集中して】    と一言だけ送ると、わたしはすぐにスマホを閉じてふとテレビを付けた。 【無理だ。透子に会いたい。もう帰りたい】 【帰ったら透子をギュッと抱きしめたい】  などのメッセージが送られてきたけど、わたしはそのメッセージを無視した。  いちいちメッセージを返してきたら、キリがないもん……。  その日のお昼、わたしはさっぱりしたものを食べたくてうどんを茹でて食べた。  藍はいつも高級なものばかり食べているから、こんな庶民的な物を食べるなんて想像出来ないけど、文句の一つも言わずに食べてくれる。  料理の味付けに失敗した時だって、マズいと言えばいいのに、そんな言葉を一切言わずに食べるんだ。 「……アンタの父親は、そんな人なんだよ」  何てお腹の子に話しかけても、何も言う訳はないけど……。藍が優しくて子供思いなことだけは、妻であるわたしにも分かる。  藍はなんだかんだ、わたしたちのことを大切にしてくれている。子供が産まれたら、藍はきっと子供のことを溺愛してくるだろうな……。
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