【9.不思議な感情】

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【9.不思議な感情】

「ん、美味い。甘くていい感じ」  嬉しそうにフルーツを頬ぼっていた藍は「これなら元気が出そうだ」と言っていた。 「甘すぎない?」 「ああ。ちょうどいいよ」 「……良かった」  藍とこうして食事をすることは、毎日の日課だ。 「バナナ美味いな」 「美味しい?良かった」  藍はフルーツが大好きだ。朝ご飯もそうだし、夕食の後にもたまにフルーツを食べている。 「え、もう食べたの?早い……」  気が付けば、藍はハチミツたっぷりのフルーツとシリアルを食べ終えていた。 「ごちそうさま」 「あ、食器、置いといて」 「分かった」  キッチンに食器を片付けた藍は、仕事に行く準備を始めた。 「透子、ネクタイ結んでくれないか?」 「え、何で?自分でやればいいのに……」  今日は珍しく、藍からネクタイを結んでほしいとお願いされた。いつもなら自分で結んでいるのに、なぜなのか……。 「今日は透子に、やってほしい気分なんだよ」 「……はぁ。仕方ないな……」    言われるがまま、藍のネクタイを結んだ。だけどこうやってネクタイを結ぶのも、ちょっとだけ緊張した。
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