【9.不思議な感情】

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「ほら。ん」  と目を閉じてキスを待とうとする藍。わたしはそんな藍に「出来たよ、ネクタイ」とだけ言って藍から離れた。 「え、おい。行ってらっしゃいのキスは?」  と藍から聞かれたわたしは「行ってらっしゃーい」とだけ伝えると、洗濯物を回すためバスルームへと向かった。 「ちょっ……藍? んんっ……!?」  なのに藍はわたしの腕を掴んで離さないようにして、そのまま唇を強引に奪ってきた。 「な、何するのよ……!」  藍のヤツ、また強引にキスしてきたし……! 「何って、行ってきますのキス。したんだけど?」  なんて藍はニヤニヤ笑いながら言ってきた。 「もう……。行ってらっしゃい」 「行ってきます。愛してるよ、透子」  嬉しそうな表情で、藍は仕事に出かけて行った。 「……はぁ」  なんかこう、藍には最近困ることが多い気がする……。不意打ちでキスしてきたりするし、なんかこう、不意打ちってダメだよね……。  はぁ……。毎日毎日、わたしは藍に驚かされてばかりだな。 「愛してるよ……か」  毎日こうやって愛してると言ってくれるのは、今までの人で藍だけだ。
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