【10.好きなのかもしれない】

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【10.好きなのかもしれない】

「透子、ただいま」 「おかえり、藍」  その日の夜、仕事を終えて帰ってきた藍は、わたしをすぐに抱きしめてくる。 「……藍?どうしたの?」 「なんか抱きしめたくなって」  わたしを抱きしめると、藍は嬉しそうにそう言っていた。 「……今日、検診行ってきたよ」 「そうか。 今日だったのか、検診」 「うん」  藍の夕飯を用意しながら、わたしは返事をした。 「どうだった?」 「別に普通、だったよ」   「そうか。良かった」  藍はちょっとだけ、嬉しそうに笑っていた。 「……元気だったよ、赤ちゃん」  わたしは藍にお茶を入れたマグカップを目の前にを置くと、そう言ってエコー写真を見せた。 「え? これ、エコー写真か?」 「……うん」  一応妊娠、五ヶ月目に入ったらしい。それでもまだ、小さいこの命を大切に思ってる。  愛おしく感じた、わたしたちの大切な命が。 「小さいな、赤ちゃん」 「……うん。小さいよね」 「だけど、可愛いな」  そう言って微笑む藍の表情は、父親だという喜びで、満ち溢れていた。 「うん。……可愛いね」
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