【10.好きなのかもしれない】

6/8
前へ
/156ページ
次へ
 そう言ってわたしの涙を、親指で優しく拭ってくれる藍。そしてわたしの髪の毛を優しく撫でながら、藍は「透子に泣き顔なんて、似合わないよ」と言ってくれた。  そんな藍の微笑む姿に、わたしは「ありがとう……藍」と返事をした。 「透子は俺の妻になるのに相応しい人だよ。 俺の妻になれるのは、透子しかいないんだよ」 「……いい妻になれないかもしれないよ、わたし」  そう言葉を返すと、藍は「いい妻になんてならなくていい。……言っただろ?透子は透子のまま、いてくれればいいって」と言葉を返してきた。 「俺が透子のことを幸せにする。透子が毎日幸せで死にそうになるくらい、幸せにしてやるって言っただろ?」  藍の力強さのあるその愛の言葉に、わたしは少し救われた気がした。 「……バカ。幸せで死んだら、もう幸せにしてもらえないじゃない」 「あっ、それもそうか」 「そうだよ……。死んだら、藍にもう抱き締めてもらえないじゃん……」  なんて、いつものわたしらしくないことを言っている。  なぜだろう……。完全に藍のペースにハマってしまっている。 「何だよ、透子。今日はやたら素直じゃん」
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2171人が本棚に入れています
本棚に追加