【11.藍の元カノ】

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 と言うと、藍は「俺よりも、透子の方が心配だよ」と言ってきた。 「え?」 「だって透子、妊娠中だし。何かあったら大変だろ?」  と言われたわたしは、藍に「大丈夫だよ、わたしは。検診でも特に問題なかったし」と言って、フルーツを食べる。 「それでも俺は、透子のことが心配なんだよ」 「……ありがとう。心配してくれて」   「おう」  朝ご飯を食べ終えた藍は、仕事に出かける準備を始めた。 「透子、ネクタイ締めてくれるか?」 「……うん。いいよ」  わたしは藍のネクタイを締めてあげようと、シャツに手をかけた。  するとその時、藍はわたしの唇をいきなり奪ってきたのだった。 「んんっ!?」  不意にキスされたわたしは、目を見開いてしまった。   「さっき、キスしてもらえなかったからさ」  と、ニヤリと笑いながら藍は言った。 「バカ……。不意打ちはやめて……」  わたしはそのまま藍のネクタイを結ぶと「出来たよ」と言って藍から離れた。 「照れるなよ、透子」 「はぁ?照れてないから……」 「可愛いな、透子は」    いつもそう言うんだよね、藍は……。
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