【11.藍の元カノ】

8/11
前へ
/156ページ
次へ
「え? 透子、もう食べないのか?」 「……いらない」 「おい、透子……?」   わたしはそのまま寝室に入り扉を締め、ベッドに潜り込んだ。   「藍……」  やっぱり何も言ってくれないんだ、朝のこと……。あんな場面、見なきゃ良かった……。  藍の後なんて、付けなければ良かった……。なんて、後悔ばかりが押し寄せてくる。 「透子、どうした? 大丈夫か?」  寝室のドアをノックした藍は、そうドア越しに問いかけてきた。 「透子、体調でも悪いのか?」  それでも何も言わないわたしに、藍は「入るぞ」と声をかけてから、ドアを開けて寝室に入ってきた。 「透子、どうした?何かあったのか?」 「……うるさい。一人にして」 「透子、何を怒ってるんだ?」  怒ってる?そりゃあ、あんな場面を見せられたら、怒りたくもなるに決まってるでしょ……。  夫である藍の、キス現場を目撃してしまったのだから。そんなの見せられたら、怒るに決まってる。 「なぁ、透子。どうしたんだよ?」 「……別に何でもないから」 「そんな訳、ないだろ?」 「うるさいな……。あっち行ってよ……」
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2171人が本棚に入れています
本棚に追加