松葉翔の場合

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松葉翔の場合

昔からなにもしなくても人に好かれた。 だけど、誰もどうでもよかった。 最低なことなんだろう ただぼんやり他人事のようにそう思ってはいた。 勝手に好きになって、 勝手に怒って、 面倒でしかなかった。 「あなたがすき。」 その言葉も全部自分に酔ってる女のざれ言にしか聞こえなかった。 そうやって、誰かに純粋に恋してる自分が好きなんだろ?恋愛してる自分が好きなんだろ? どうせ飾り程度にしか俺をみてないくせに、 都合よくいいとこ取りして何が悪い。 そうやって、ずっと過ごすんだと思ってた。 大学で、突然変な女、日向に会った。 「私とも遊んでくれませんか!!」 そいつは俺に対する執着が全くなくて、 小さなことで喜んで、 何にでも手をだして、自由で、楽しそうだった。 急に電話で呼び出されるのは日常茶飯事で、 映画に行きたいだの、温泉いきたいだの、 それに付き合わされるのは面倒だったけど、 まぁ、居心地がよかった。 いつのまにか、一緒にいることが多くなった。 そうしてしばらくして、俺以外にもいろんな男と関わりを持つようになったと、俺に何の悪びれもなく言ってきた。だいたいは、一夜の過ちみたいに、一回限りが多いみたいだったけど、 俺みたいに長く続いているのは、俺含め三人程度らしい。それからは、俺の女関係についてもいつも楽しそうに話を聞いきた。 「ロマンチックな出会いだね~」なんてのんきに言ったりして、 俺とこいつは同じなんだと思った。 恋愛のいいとこ取りして生きるのが好きで、だからこいつといると居心地がいい。 -------------- あの日、 いつものように日向が家に来てベッドにつれていこうとした。 「私さ、もうやめたんだ。」 「、、は?」 「だからやめたの!好きな人で来たから。」 「無理だろ。」 「はー?できるよ!本当は一途なんだから私。」 「むりむり、てかする意味ないだろ。」 「あるよ!私結婚したいもん。」 「は、、結婚、、したいの?」 「何その心底驚いた顔!一応小学校の時の私の夢はいい奥さんなんだから!」 「そんだけ遊んどいて?」 「遊んでたっていいでしょう? これから、一筋だし!」 「はぁ? お前、ばかだって前から思ってたけど、 ほんとにばかだな。」 「そんなことない! とりあえず、今日で最後ね会うの。なんだかんだ翔ちゃんにはお世話になってたので、寂しいけど、ありがとね。」 「、、、あっそ。」 あっけない終わりだ。 突然俺の人生に割り込んできたくせに、 終わりも突然だった。こいつらしいと言えばこいつらしいのかもしれない。 このまま、こいつとの関係がおわったって、 別に、 「いたい、、 手いたい! なん?なに??どうしたの?」 よくないけど。 「、、、」 「、、ごめんね。勝手で。」 「は?」 「私さ、勝手に翔ちゃんと私は同じ部類の人間だと思っててさ、」 俺もだよ。俺もそう思ってた。 「人の好意が信じられなくて、信じるより、 適当に過ごしてれば、楽でいいって。」 「、、」 「だけど、 本当はたくさんの人に好きだって言ってもらっても寂しい。全部、嘘だから。好きになりたかったし、なってもらいたかった。」 「俺は違う。そんなもんいらない。」 「そうだね。 翔ちゃんは、本当に好かれなくても、 一人でも満たされる人なのもしれない。 でも私は、そういうふりをしてきただけだった。 人を好きになって拒まれるのが怖いだけで、人を好きになれなかったわけじゃない。」 いつもみたいに、 ばかみたいにへらへら笑っとけばいいのに、 なんでそんな真剣な顔してんだよ。 「思う存分、愛してみたい。」 うるさい。うるさい。 「今までありがとね。 しょうちゃん。」 お前までそんなつまんないこというなよ。 いやだいやだいやだ、 「いくな、」 「、、」 「今まで通りでいろよ、」 「、、ごめん、 はなして、」 「俺だってっ、、 俺は、、」 何を言えばいいかわからない。 ただ、嫌だってことしかでてこない。
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