早川ようの場合

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早川ようの場合

自分が嫌いだった。 中学の時、からかわれてる同級生がいて、その子が苦しんでいるのを知ってたのに、止めろと一度も言えないまま卒業した。 なんの勇気もでないくせに、人をバカにするやつを軽蔑してる自分の弱さが嫌いだった。 高校の時も、女子にかわいいランキングをつけている友達に、そんなのいいきしないだろって止めさせた。それなのに、クラスを仕切る、いわゆる陽キャが黒板にクラスの女子かわいいランキングをでかでかと書いたとき、なにも言えなかった。 自分は他人を見て、態度を変えるようなやつだ。 友達にあんな風に止めさせたくせに。 自分の偽善者面なところがだいっきらいだ。 大学生になって、人によって態度を変えたくないから、もうなにも言わないと決めた。 それが間違っていると思っても、なにも言わない。結局、俺はそっちにいくんだ。 本当に、弱い。 コンビニで初めてバイトをするようになって、店長や、バイトの人たちは皆優しかった。 だから、役に立てるように頑張ろうと思った。 わからないこともあって、覚えるのも下手くそだった。だからせめて、 「いらっしゃいませー!」 疲れてても、声は出す。 お客さんに雑な対応はしないように心がけて。 意味なんてなかったかもしれない。 お客さんにとっては、ただの店員で、 素早く対応できた方がいいに決まってる。 でも、まだまだなれなくて、できそこないだから、これは自己満だ。 弱くて、なんにもできない。 だけど、それで自信なさげでやってても、 余計に迷惑かけるだけだと知ってるから、 笑顔で、声は大きく、 役に立つことではないかもしれないけど、 意味なんてないことかもしれないけど、 それでもこれだけはいまできる精一杯だから、 やりとげる。 そう決めて半年くらいたった。 お客さんには、遅いと怒られることもしばしばで、わからないことがあると、店長が急いで対応してくれる、そのたび申し訳なくて、でも店長もバイトの人も、一度も僕を責めなかった。休憩も楽しく会話してくれた。 余計に、ここにいることが申し訳なかった。 僕はここにいたいけど、 迷惑かもしれない。 でも急にやめても迷惑だ。 あーーー 僕はどうしたって迷惑でしかない。 「あの。 レジお願いします。」 「、、あっ!すぐ対応します! すいまさんす!、あっ、、」 「ふふっ、、 あ!! 笑っちゃってごめんなさい!」 「いや!!笑ってくれてむしろ ありがとうございます?!」 あ、ものすごいてんぱってる。 はずかしい。やばい。 「いえ??こちらこそ?ふふっ。」 はやくレジおわらせよう!!はずかしい!! 結局、てんぱってめっちゃてこずってしまった。 「すいません。 お待たせしました!レシートです。」 「ありがとうございます。 あの、、」 「、、はい、」 レジ遅すぎましたよね!? ごめんなさい!! もうあなた様の目に入らないよう全力でっ!! 「あの! いつも丁寧な接客ありがとうございます!」 「へ、」 「私たまにこのコンビニ来るんですけど、 いつも笑顔で、話し方も、すごく優しくて神店員さんだなーって思ってて、 今日もありがとうございます!」 え。。 まさか、褒められると思ってなかったから、 すごく嬉しい。 見てくれてる人がいたのか、 僕がやってきたことが、そうか、 「、、ありがとうございます。」 ああ、僕生きててよかったぁ。 バイトが終わって、店長にいつものように ありがとね。といわれた。 いつもは、お世辞だと思うのに、 今日はなんだか素直に受け取れた。 単純なもので、それからもバイトを頑張れた。 店長もバイトの人たちも、相変わらず優しかった。 生きてて、こんなに幸せな場所にいれるなんて、 あーーー幸せだなぁ。 それからちょっとずつ明るくいられるようになった。 それからも、あのお客さんはよく来てくれた。 レジ対応できなくても、 いつも会釈だけはしてくれる。 いい人だなぁ。 それから、そのお客さんが来た日はラッキーデイと名付けて、毎回、来てくれるのを楽しみに待っていた。 そう、あれだ!推し!
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