早川ようの場合3

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早川ようの場合3

次の日も推しのお客さんは来ていた。 おもわず気づかないふりをしてしまった。 最悪だ。 ごめんなさい! ごめんなさい! 今日はバイトがいつもより早い時間で上がれたはずなのに、どっと疲れた。 もう今日は即帰ろう。 もう寝よう。 明日からまた、笑顔で接客できるようにしないと。 「あ、、」 「あ、お客さん。」 びっくりした。 こんな風にコンビニ以外で会えるとおもってなかった。 というか、全然推してるお客さんに会う心構えができてなかったと言うか、あー!! きまずい!! 「こんにちは! 今日いそがしそうでしたね。お疲れ様です。」 「あ! はい! いつもお世話になってます!!」 あーー 今日気づかないふりしてごめんなさい! めっちゃいいひとだぁぁ 「いやいや、こちらこそ、、 あの!昨日、うるさかったですか?」 「へ、、?」 「いや、あの 友達と一緒にいて、猫かぶってたというか、 全然キャラ違って見えたかなとか、、、その、気になって、」 声がだんだん小さくなっていく。 でも、友達かぁぁあ! よかったぁ、 いや、いやいや! うわぁぁあめっちゃ嬉しくなってしまっている。推し!ただの推し!! そうじゃなきゃ困る!! 「騒がしくしてしまってごめんなさい!」 「いや!いやいや! 大丈夫です! 楽しそうで何よりです!?」 「、、っぷ!ははは!」 「あ、、はは」 それから、帰る道が途中まで一緒だったらしく、他愛もない話をした。 その次の日もお客さんとバイト終わりに遭遇して、途中まで帰ることになった。 「バイトできるなんてすごいですね。」 「へ?」 「私、いっつもバイトすぐやめちゃうんですよ。 要領悪くて、覚えられないし迷惑かけちゃうし、 だから、てきぱき仕事こなしてて尊敬します。」 そんな風に見えてるんだ。僕。 「いや、そんなことないですよ。いつも失敗ばかりで、最近やっとなれてきたって感じです。」 「それでもすごいです! 私いっつも出来ないって思うと、怖くなって逃げちゃうんです。こんなんで将来社会人として働けるのかなぁって不安です。なんでこんなに不器用なのか、ははっ」 僕もそう思っていた。僕だけだと思っていたわけじゃないけど、同じような気持ちの人がいるのは何だかほっとした。 「僕もそうでした。 逃げてばかりでした。」 僕も、ずっとそんな自分が嫌いだった。 「バイトも本当はやめようと思ってたんです。 でも、お客さんが、ありがとうっていってくれて、ほんとうに嬉しかったんです。」 そういや、このバイトくらいかもしれない。 逃げずに続けられたのは。 「ありがとうございます。 あのとき、声かけてくださって。」 「、、 よかったです。 気持ちわるいかなって思ってたから。」 「そんなことないです!」 「そっか、、よかった。こんな私でも勇気出して言って店員さんのが喜んでくれたなら。」 あ、かわいい。 お客さんは僕から見たら自信があるように見えていた。 だけど、なんだか、自分と勝手に重ね合わせてるだけかもしれないけど、きっと、、 「それじゃあここで!またコンビニいきますね!」 「はい!またコンビニでお待ちしてます。」 こんな風に、話せるとは夢にも思ってなくて、 そのとき、たぶん、推しとかいいわけで、 好きになってたんだろうなと自覚した。 笑っていてほしいとか、守りたいとか勝手に思ってしまうくらいに。 でも、これはさすがに、キモいかもしれない。いやかなり。 怖がられる? あーそれは、いやだなぁ。 このままいい距離感がいいのかもしれない。 でも、今度こそ、 彼氏さんを連れてこられたら、 僕はまた、逃げるんだろうか。 次の日のバイトでは、推しのお客さんは来なかった。 お客さんに会いたいと思う。 気持ち悪いな。 こんな気持ちは。 好きなんて言っていいはずない。 こんな僕が、、 あ、 また僕は僕を卑下している。 卑下してなにも行動できない自分が嫌いだった。 こんな僕は少し変われた気がした。 勇気を出して、相手から怒られたり、 嫌われたりしたくなくて、迷惑をかけたくもない。 お客さんがくれた勇気を僕もあげられないだろうか。なんとなく、自分のことを卑下するようなことをお客さんもいうから。 自信がもてない気持ちは、僕にもよくわかる。 たった一人でも僕は僕を認めてもらえたら嬉しかったから。だから、お客さんはすごく素敵なんだって伝えたい。 勇気を出して伝えて怖がらせたらごめんなさい。 そしたらバイトもやめて慎ましくいきます。 ふぅ、よし! 「いらっしゃいま、、せ」 ぺこ あ!!!きた!! よし!よし! いうぞ!! きもかったらごめんなさい! こわがらせたらごめんなさい!! いう、 いうぞ、、 というか、バイト中にやばいか? やばいやつか?? でも会えないかもしれない。 もう、バイト終わりに会うなんて奇跡 ないかもしれない。 「あの、 これ、お願いします。」 「あ!はい!!」 「レシートです。」 「ありがとうございます。」 ああた言う!!決めたんだから!!言う!! 「、、あの!」 「はい!」 「あの、、けっこんしてください!!」 あ、間違えた 「へ?」 あ、まちがえだだだだ! ちょっと意識しすぎて、 めっちゃすんごい告白してしまったぁぃぁぁあ!!やめます!もうバイトやめて隠居します、、 「あ!いや、ちが、、」 「はい!!」 「へ?」 「お願いします! でも、あの、一週間まっていただけませんか! まずはお付き合いからお願いします!」 え、ええぇぇ?
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