0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま」
狼は恐る恐る、沙奈の後をついて行き事務所の中へと入っていった。
「おっ、おじゃまします……」
狼はバックを胸に抱き寄せて、周りを伺っていた。
「狼くん、そこに荷物置いてね」
周りを伺ったが、誰の気配もなかった。
ドアを勢いよく開けて、誰かが入ってきた。
狼は体をビクつかせながら、小さくうずくまっていた。
「ただいま戻りました!沙奈さん。」
「ちょうどいい所に戻ってきた♡」と沙奈がご機嫌そうに、赤髪の男性に近づいた。
見るからに人相が悪そうで、顎マスクをして片手にはコーヒー。そして、左耳にはピアスを付けていた。
狼は絡まれるのが嫌で目を逸らしていた。
「嫌っすよ!俺、素人嫌いなの知ってますよね?それもハンターじゃねぇ。見えるだけなんてただの人間だろ?」
赤髪の男が、社長である沙奈と揉めていた。
「そこをなんとか。ねぇ、お願い。」
「いくら、沙奈さんのお願いでも……」
男は後ろの髪をかきながら、そっぽを向いた。
「じゃあ、給料を今月から上げるってどうかしら?」
上目遣いで男の様子を沙奈は伺っていた。
「乗った!約束っすからね!」
沙奈が持っていた書類を受け取り、狼の首根っこを掴み、事務所から出ていった。
「社長、あのバカに任せて良かったんですか?」
「いいのよ。魁ちゃん腕は確かだから。」
スマホをイジりながら、違う部屋から茶髪で横髪にピン留めをした男が出てきた。
「社長が言うならいいんですよ。」
「その、社長っての堅苦しいから沙奈でもいいのよ、そろそろ。」
「目上の人間は敬えってあのバカに教わってるんで。そこはきっちりしないと」
「ふふふっ。結蘭(ゆうら)は真面目ね。」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あっ、あの……」
「つべこべ言わずに俺様についてこい。」
ガハハっと笑いながら、狼を連れ去った。
「……おい。オオカミ!そこに居ろ」
急に男は止まり、狼を離し前かがみになり周りを警戒しだした。
「あの、どうしたんですか…?」
「しっ、黙ってろ。そして、少し離れてろじゃねーと、怪我するぞ」
ポケットから拳銃を取り出した。
そして、その銃を狼に向けて引き金を引いた。
「お前はここにいるべきじゃねぇ」
その放った弾は狼をすり抜けた。
うわぁーーーーーー。と狼の後ろで悲鳴が上がり、後ろを恐る恐る見るとお化けが苦しそうに倒れ込んでいた。
こんなに悲鳴をあげて、しかも銃弾を放っているのに、周りの人は騒がすそのまま通りすぎている。
「どっ、どういう……」
男はポケットから手帳を取り出し、倒れていた者を吸い込んだ。
「ほら、行くぞ。」と狼に手を差しのべた。
狼は男の手を取り、立ち上がりそのまま男について行った。
最初のコメントを投稿しよう!