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蓮太が人助けに駆り出されるようになったのは、ここに来て間もなくのことだった。
商店街にある八百屋の店主がギックリ腰になり、たまたま通りかかった蓮太が彼を助け、その後女将さんと病院に行っている間、店番を任されたのがきっかけだった。
それからというもの、商店街の住人たちは何かというと蓮太を頼るようになった。人手が足りない時の応援はもちろん、犬の散歩から植木の水やりまで、ありとあらゆることを頼みにくるのだ。
時には頼まれた時間がかち合いトラブルになることもしばしばで、困った香澄はついに蓮太の貸し出しノートを作った。
こうなるともはや遠慮はいらない。住民たちはこぞって貸し出しノートに日時と仕事内容を記入するようになり、蓮太は一日の終わりにそれを確認するのが日課となった。
そしていつしか蓮太は、その名にちなんで『レンタルマン』と呼ばれるようになった。
商店街を歩けばどこからともなく声をかけられ、あっという間に町の人気者となっていった。
「まあこの喫茶店も、香澄ちゃんとあずさちゃんだけで回ってるっちゃ回ってるけどね」
軽く目を閉じコーヒーの香りを堪能したあと、坂田は静かにひと口それをすすった。
「そうですね。私も、蓮太が皆さんに可愛がってもらえて嬉しいです」
香澄は誇らしげに、ふふっと肩をすくめて笑った。
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