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駐車場に入った少年たちは、木陰に自転車を停めると我先に向日葵畑へ駆けていった。花に興味がないと言いつつ、実際目にした圧倒的な風景に、四人は心から興奮して飛び込む。
始めは皆、無我夢中で走っているだけだったが、次第に追いかけっこになり、じきにかくれんぼとなった。向日葵はちょうど見頃を迎え、子供の背丈を優に超える高さに成長している。かくれんぼ、というのは、視界が向日葵によって遮られるため、何処に誰がいるのかが分からないからだ。
友人たちとはぐれたシゲユキは、まずゲンキを探すことにした。彼はあまり持久力のあるほうではなく、少し引き返せば発見できると思われた。予想は当たり、ゲンキは地べたに座ったまま空を仰いでいた。
「オイラは疲れたから、此処で待ってるよ」
「間違っても、ヒマワリの種を間食するんじゃないぞ」
シゲユキは念を押して、残りの二人を探すことにした。ユイトは小柄で足は速いが、臆病者なので近くにいる可能性が高い。シゲユキは、彼の大好きな昆虫の名前を使って、誘き寄せることにした。
「わあ、すごい! メチャクチャでかい、オニヤンマだ!」
耳を澄ますと、ザッザッと乾いた土を駆けてくる足音が聞こえた。声に反応したのか、右側から突如ユイトが現れる。彼は知らずに目の前を横切ろうとしたので、シゲユキは咄嗟に声をかけた。
「ユイト、こっちだ」
ユイトは丸眼鏡の奥で目を見開き、シゲユキに近寄ってきた。
「あれえ、オニヤンマは?」
「もう裏手の山へ飛んでいったよ。残念だったな」
シゲユキはユイトと手分けして、まだ見つけてないタカシを探すことにした。タカシは活発な少年なため、近場にいなければ遠くへ行ってしまったと考えられた。
「とりあえず、向日葵畑を一周しよう。ユイトは右から、僕は左から。いいね?」
「オッケー。じゃ、また後で」
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