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背筋が寒くなった二人は、急いで向日葵畑を駆け抜けていった。
くたくたに疲弊した少年たちは、温いラムネジュースを喉に流し込んで、駐車場の茂みに寝転んだ。目一杯遊んだのに空はまだ明るく、ソフトクリームに似た真っ白い雲が美味そうに流れてゆく。
「なあ、腹減ったな」
「そりゃ、いつものことだろう」
「また、駄菓子屋でアイスを買おうか?」
「だったら、競争しようぜ」
四人は一斉に起き上がって、自分の自転車に飛び乗った。走りだして間もなく、木立の中からざわめきが聞こえてくる。雨が降ってきたのだ。
「雨だあ」
「止まるなよ、競争してんだから」
雨は勢いを強め、少年たちの火照った躰をことごとく濡らす。だが、誰一人として不満げな表情はしていない。葉叢からは光の筋が差し、路上の雨粒を煌めかせた。
「降れー!」
「もっと降りやがれー!」
失うことをまだ知らない少年たちに、刹那の通り雨は降り注ぐ。シゲユキはこのとき、梢を叩く雨音が遠い日の友人たちの声を思い起こさせるものになるとは、気付きもしなかった。
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