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Ash 0
「レンタルメモリ?」
俺はノートから顔を上げ、立って俺を見下ろす同級生、燻に聞き返した。その背後では他のクラスメートがそれぞれ自分の机で必死に教科書やプリントにかじりついている。
「そうだ。都市伝説じゃなくて実在するんだぞ、闇外科医。しかも、十五歳までの客ならさらに格安でやってもらえるって話だ」
濃い灰色の目が刺すようにこっちを見る。
煽ってるつもりか?
そんなくだらん話につき合ってる暇はない。俺は勉強が忙しいんだ。覚えることが多すぎる。
シャツの袖口をつまんでイブシを睨む。
まずは顔を。次に制服の袖口から覗く右手首を。
そこで見た色に、癖になる快感が浮上する。
凡人が。
「俺よりお前のほうが必要なんじゃねえの? 記憶容量のフォーマット」
「ばぁか、偽タトゥーに決まってるだろ。灰もいい加減流行りについていけっての」
イブシは袖口を大げさに捲って、手首の赤く光るシミを見せつけた。
……ちっ。
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