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「わざわざ自分はバカだって見せびらかすのか?」
とんだ恥さらしだな。
「くたばる寸前に見えるのがイケてるんだろうが」
「イカレてるな」
「はっ、学校経営者の息子は言うことが違うね」
イブシは袖を直して俺に背を向けた。
「ま、もし気になったら訊いてくれよ。確かな情報だからな」
鬱陶しい余裕を振りまきながら、イブシが教室を去る。
俺は自分の袖口を引っ張り、またノートに向き直った。
手首の赤い光の偽タトゥーはこの進学校の生徒の間で流行ってる。
十五歳で赤く染まる手首という頭の悪さの証拠を「くたばる寸前に見える」からイケてると捉えるなんてな。
笑えない解釈だ。なぜなら。
袖口をずらして、自分の手首を見下ろす。
俺はマジでくたばる寸前だからだ。
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