Ash 0

2/16
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「わざわざ自分はバカだって見せびらかすのか?」  とんだ恥さらしだな。 「くたばる寸前に見えるのがイケてるんだろうが」 「イカレてるな」 「はっ、学校経営者の息子は言うことが違うね」  イブシは袖を直して俺に背を向けた。 「ま、もし気になったら訊いてくれよ。確かな情報だからな」  鬱陶しい余裕を振りまきながら、イブシが教室を去る。  俺は自分の袖口を引っ張り、またノートに向き直った。  手首の赤い光の偽タトゥーはこの進学校の生徒の間で流行ってる。  十五歳で赤く染まる手首という頭の悪さの証拠を「くたばる寸前に見える」からイケてると捉えるなんてな。  笑えない解釈だ。なぜなら。  袖口をずらして、自分の手首を見下ろす。  俺はマジでくたばる寸前だからだ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!