Ash 0

4/16
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「お前が闇外科医か?」  中に入って、診察室らしい部屋に通された俺は、目の前で気味悪く笑う男を睨んだ。  全く読めない奴だ。年齢不詳で、動きは人形みたいにぎこちない。下地の絵にパーツを貼り付けたみたいな顔の表情はほとんど仮面だ。  服もイカレてる。科学者が纏うような丈の長い襟付きの上着を、前を開いたまま羽織っているが、その色は科学者のものと真逆だ。  さしずめ、黒い白衣と言ったとこか? 趣味(ワリ)い。  男は唇を細く伸ばして言った。 「いかにも。名はエボニーと申します」 「レンタルメモリの話は本当か?」  本題に入る。戯言に付き合ってる暇はない。 「本当ですとも。詳細に教えて差し上げましょうか?」 「教えろ」  すぐに返すと、エボニーと名乗る黒い白衣の外科医は机に手を伸ばし、万年筆に似た器具を取った。 「人の記憶容量(メモリ)の操作手術の基本はご存知ですか?」 「当たり前だ。俺を誰だと思ってる。××学院の経営一族の……」 「では、メモリ操作とはむしろ無縁の身の上ではございませんか?」  一瞬、体が固まる。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!