10人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「お前が闇外科医か?」
中に入って、診察室らしい部屋に通された俺は、目の前で気味悪く笑う男を睨んだ。
全く読めない奴だ。年齢不詳で、動きは人形みたいにぎこちない。下地の絵にパーツを貼り付けたみたいな顔の表情はほとんど仮面だ。
服もイカレてる。科学者が纏うような丈の長い襟付きの上着を、前を開いたまま羽織っているが、その色は科学者のものと真逆だ。
さしずめ、黒い白衣と言ったとこか? 趣味悪い。
男は唇を細く伸ばして言った。
「いかにも。名はエボニーと申します」
「レンタルメモリの話は本当か?」
本題に入る。戯言に付き合ってる暇はない。
「本当ですとも。詳細に教えて差し上げましょうか?」
「教えろ」
すぐに返すと、エボニーと名乗る黒い白衣の外科医は机に手を伸ばし、万年筆に似た器具を取った。
「人の記憶容量の操作手術の基本はご存知ですか?」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってる。××学院の経営一族の……」
「では、メモリ操作とはむしろ無縁の身の上ではございませんか?」
一瞬、体が固まる。
最初のコメントを投稿しよう!