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ポツポツポツポツ。
家に入って間もなくして耳に届く音。その音に耳を傾けつつ、私は窓辺でお茶を飲む。
庭での作業が終わるまで降らないでくれて良かった。水に濡れるのは嫌いだ。けど、雨音は好き。何となく落ち着くから、雨が奏でる旋律を聴きながら私は庭を眺める。
庭に植えられた紫陽花は今年も見事に花を咲かせてくれた。
紫やピンク、青に水色、そして赤。様々な色の紫陽花が咲く庭が昔から好きだった。雨に降られると、さらに艶めかしい表情を見せてくれる。雨が彼らを美しく彩り、普段とは非なる光景を生み出す姿は見ていて楽しい。
ざーざーざー。
雨音が強く激しくなっていく。
雨の運ぶ香りも嫌いじゃない。けど、こんなに強いんじゃ、香りも流されてしまったことだろう。土は何度も雨に叩かれ、足跡やら何やらが消しさられていく。
本当は雨の匂いがふんわりと香り、強すぎず弱すぎずな雨音が好きなんだけど。
けど、まぁ。
今日は強すぎるほどの雨音に胸が穏やかになる。水が全てを洗い流してくれるから。赤く染まった花弁も明日には違う色へとなっているはず。
まだ花咲かぬ紫陽花は、昨年は確かピンクに花を咲かせていた。今年は何色に花咲かすだろう──やはり、青く咲くのだろうか。
未だに、ちょっとだけ盛り上がっている土は雨によって、有耶無耶に変化させられていく様を眺め、雨音を楽しむ。
明日は晴れ。
雨で流され、叩かれ、ぬかるんだ地は太陽がかためてくれるのだろう。
あぁ、明日の庭も楽しみだ。
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