ざあ、ざあ、ざあ。

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 ざあざあ、ざあざあ。  ざあざあ、ざあざあ。  ざあざあ、ざあざあ。  ざあざあ、ざあざあ。 『ていうかさっきからあたしが一方的に喋っちゃってんね、ごめんごめん。つか、汐音。話聞いてるー?』  ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ――。 「……ねえ、深雪」  私は雨音に紛れそうになる彼女の声を、必死で聞き取ろうとしながら。どうにか震える手で受話器を握り、声を絞り出したのだった。  この悪寒は、なんだろう。雨音が聞こえるだけなのに。彼女は携帯が水没した以外の不幸を自分に語ってはいないのに。一年間、それ以外におかしなことは起きていないのに。 「深雪からの電話、ずっと変なの。雨音が煩くて、深雪の声も掻き消されそうで……深雪がそのアパートに引っ越してからなの!ねえ、そのアパート、どこ?安いからって変な事故物件とかに住んでないよね!?」  勇気を出して私が叫んだ、次の瞬間。  雨音が、一瞬やんだ。そして。 『東京都練馬区●●町×丁目。カドクラハイツ402』  それは、確かに深雪の声であるはずだった。それでもさっきまでのテンションの高さが打って変わって、妙に冷淡な声で。  住所だけを言って、電話は唐突に切れたのである。 「……深雪?」  ぞわり、と背筋が泡立ったのだ。
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