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コスモスの過ち(恋人の正位置)
数多の間違いを経験しながら、自分の中の正解を求めていく。
「レッスンの時間よ主!」
「今日のお題は何?」
恋愛のエキスパートとして知られている、恋人さんこと『恋人』の正位置は、恋愛の極意を叩き込んでくれる。その多くは説得力のあるものばかりで、経験者だからこそ分かるものなのだと納得する。
「今日のレッスンは、接ぎ木についてよ!」
「接ぎ木……? 接ぎ木って別の植物を上にくっつけて、一つの植物にするってやつ?」
「簡単に言えばそうなるわね。接ぎ木には害虫対策をする効果もあるとされているから、植物にとってとても意味のあることでもあるわ」
植物の生命力と再生力は、かなり強い。その強力な再生力のもとに行われる接ぎ木が、今回のレッスンの題材のようだ。彼女のレッスンは恋愛にまつわるものが多いため、大方立ち直り方についてのレッスンなのだろう。
「再生力と失恋に対する立ち直り方が、今回のレッスンのポイント?」
「それも一理あるけど、今回は失恋によって受けた傷や過ちをどう生かすのか。うまく生かせば新しい可能性を生み出せる……そこがポイントよ」
恋愛のエキスパートである彼女も、同じように数々の傷や過ちを生かし、新たな可能性を生み出してきたという。傷つくことを恐れたり、失敗を恐れるのではなく、それをどう生かせるかを考えて行動を起こすことが重要だと、彼女は話した。
「傷を知るということは、誰かの痛みを知れるということ。傷なくして恋愛のエキスパートは名乗れないわ。何度も修復しながら少しずつ自分らしく成長をしていく。そこから可能性が生まれてくるのだから」
「そうだね、痛みをわかるから共感もできる。寄り添って話をすることもできる……傷ついたままにするんじゃなくて、別のものを育てればいいんだね」
「人同士なら、なおのことできるはずよ。接ぎ木を行う時だって、近い分類の植物を用いられることが多いんだから」
人の痛みは完全には理解できない。それでも、寄り添い生かそうとすることはできる。数多の過ちを、別のものに変えて生み出し続けた彼女の言葉は、深く心にしみこんでいくのであった。
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