ぼやける輝き(星の正位置)

1/1
前へ
/20ページ
次へ

ぼやける輝き(星の正位置)

 定期的に磨かなければ、どんな輝きであってもぼやけて見える。  夜、キラキラと輝く星を眺めながら、私は自分の爪を磨いていた。恋人さんこと『恋人』の正位置から自分磨きの基本を叩き込まれ、次に会うまでの課題として、爪を磨いておくように言われたからだ。強くこすりすぎないよう、やすりで形を整え、ネイルオイルでマッサージをする。これがかなりの気力が必要で、毎日平然とこなしている彼女を大いに尊敬する。 「主何してるのー?」 「あ、スターちゃんこんばんは。恋人さんに言われて爪を磨いていたの」 「すごくきれいー! 主の爪に星が宿ったみたいだね!」  とびっきりの笑顔でそういうスターちゃんこと『星』の正位置は、ある意味自分磨きを大切にしている。彼女たち星は、常に自分の輝きを見直し、如何に見てもらえるかを考えている。数多ある星の中で、より輝いているものこそが、気づいてもらえるからだ。 「あはは、スターちゃんらしい表現だね」 「輝きを保つのってすごく大変だけど、その努力をしている姿の時点で輝いてるなって思うの! 頑張っている人って応援したくなるし、その応援を受けて更に輝けるでしょう?」  彼女はいつも、人を大切に想い、その人の今までの努力を含めて評価している。辿ってきた人生そのものの輝きに目をかけ、拾い上げ、心の底から人を愛してくれる。 「確かにそうだね、努力をする人って一生懸命だし。見ていて応援したくなる」 「でも、自分の輝きを押し付けたり、満足して放置したりする人は嫌だな。自分だけが輝いていればいいって思う人の輝きは、長続きしないから」  日頃の行いを見直したり、自分磨きをしたりしながら、人は自分だけの輝きを保っていく。その輝きで人を照らし、支えることもできる。押し付け、忌み嫌われ、自分の輝きに酔いしれてぼやけてしまうこともある。彼女の言葉に、どんな時でも、驕り高(おごりたか)ぶってはいけないんだと痛感するのであった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加