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「とにかく行動」
つぶやいてコンビニに飛び込んだ。その言葉は、母親が朱音を追い立てる時のものだった。
レターセットを買うとハンバーガーショップで遅い昼食をとる。
――家を出て自立します――、母親あての短い手紙を書いた。電話を掛けようとは1ミリも考えなかった。電話をしたら、質問され、説教され、決意は揺らぎ不快な思いをするとわかっている。
朱音に父親はいない。それが誰なのか、母は教えてさえくれない。祖父も朱音が生まれるよりも早く祖母と離婚して家を出ていた。だから、家族は母と祖母の女性3人だけだった。
母にも祖母にも伴侶がいないという事実を考えたことは何度もある。どうして一条家には男性がいつかないのか?……疑問をぶつけたこともあった。が、一度として満足な答えを得たことはなかった。
私は、私だけの温かい家庭をつくるわ。……そうした決断は、自立することだという満足感を与えてくれた。
「ヨッシ」
全ての疑問を手紙と共に封印した。
封筒がポストの内側に落ち、コトリという小さな音を聞いた時、母や祖母との絆が完全に切れたとわかった。胸の中が自由と不安でいっぱいになった。
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