42人が本棚に入れています
本棚に追加
「...ラウちゃん。私たちもお部屋に帰りましょうか」
カリンはそう言って部屋へ向かって歩き出す。だが途中で彼がついて来ていないことに気づき、足を止めて振り返る。
「...ラウちゃん」
ラウは立ち止まって、何かを考えていたようだった。
「カ...リッカ様、すみません。少々考え事をしていまして...」
彼はカリンに名を呼ばれ、危うくカリンという名を言いかける程動揺している。
「早く、お部屋に帰りましょうか」
カリンはラウの行動に疑問を感じつつも、彼に促されるまま部屋へと帰る。
(ラウちゃんがこういう場でミスをしかけることなど普段はないのですが...。何か、そんなに気にかかることでもあったのでしょうか)
その途中で、カリンは前を行くラウを見つめながら考える。だが、部屋に着くまでにカリンがその結論に辿り着くことはなかった。
「カリン様、どうぞ、部屋へお入りください。式典でさぞお疲れでしょう」
ラウが部屋の扉を開け、カリンの名を呼んで言う。その表情や挙動に先程までの動揺は見られなかった。
「...ラウちゃん、ありがとう」
カリンは、ラウに一言礼を言ってから部屋へと入る。そして、部屋の中央に置かれているベッドへ腰かける。ラウはその様子を黙って見つめた後、扉を静かに閉め、顔を伏せたままカリンの正面へと歩いてくる。
最初のコメントを投稿しよう!