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「ラウも...リンカも久しぶりねえ」
その親しげな様子に、カリンは小さく首を傾げた。
「...久しぶり、ですか。ラウくんもウォルカ様と面識が...?」
ウォルカに続いて、言葉を紡ごうとしたグロッタが僅かに目を見開いたのがわかった。
「くん...?」
「はい。昔、色々ありまして」
間髪いれず、静かな声でラウが釈明する。昔、色々...。随分、濁された気もするが、彼にも話したくないことはあるのだろう。そう考え、カリンが静観の姿勢を取ったときだった。
「昔?昔って何の話?」
ウォルカが疑念の声を上げたのだ。その場にいた者たちの視線が一斉に彼女の方へ向いた。こめかみに手を当てて唸り声を上げるウォルカだったが、暫しの後、グロッタがそちらへと歩みを向けた。ウォルカのすぐ隣で足を止め、何事かを耳打ちすれば、彼女の瞳がはっきりと見開かれた。
そうして、ウォルカから僅かに距離を取り、グロッタは朗らかに微笑んだ。
「ウォルカちゃん。少し前のことをもう忘れたのですか?」
「残念だけど、まあったく覚えてないわね。ホント、時の流れには辟易よ」
見開かれた御空色の瞳でぱちりと大きく瞬きをし、ウォルカは首を横に振った。その時、カリンと目が合ったが、何もなかったように逸らされてしまった。
(.........)
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