第二章 「あの日の誓い 中編」

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 キクナはというと貴族たちの反応が余程可笑しかったのか、もう一度口を開いて何事かを言わんとする。 「お前たち、そこまでだ」 だがその前に、これまで沈黙を貫いてきたフェルドが一言そう発する。 さほど、声が大きかったわけでも、声が低かったわけでも、ましてや怒声等であったわけでもない。だというのに、ラウもキクナも、特に関与していなかった者たちでさえ皆一様に言い知れぬ恐怖の念を抱く。だが、流石と言おうか。その中でキクナが最初に普段の気性を取り戻し、フェルドのことをキッと睨みつける。 「フェルド様、なぜ私まで叱るのです。私は、正しいことを言ったまで___ 」 「キクナ、やめておけ。それ以上は、王家の品位に関わるであろう」 そして自身の無実を主張しようとするが、その発言は途中でフェルドによって止められてしまう。 「どうしてなのです、フェルド様...」 二度に渡って発言を咎められたキクナは、悔しそうに唇を噛み締めながらぽつりと言葉を溢した。だがフェルドがその問いに答えることはなく、一言告げる。 「キクナ、お前は一旦部屋に戻っていなさい。それから、リッカ。お前もだ」 「わ、わかりました...」 キクナは先程の勢いはどこへやら、すっかり落ち込んでしまったようで、そのシュンとした様子のまま、部屋へと帰っていった。そして、キクナが部屋へと帰っていくと同時に、貴族たちはこれまたしんと静まり返る。その様子を見たフェルドが一つため息をつき、一拍おいた後こう言う。 「皆よ、すまんな。このような、喜ばしい式典の場を.........。ここは、私の顔を立ててくれぬか?」 貴族たちは、その言葉に一も二もなく頷きを返し、先程と何ら変わりのない構図ができあがる。_カリンだけを、また一人取り残したまま。
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